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高周波誘導加熱とは、金属を非接触で自己発熱させる方式で、ろう付・溶解・焼入れ・焼鈍・焼嵌などに利用されています。本ページでは、誘導加熱の原理・特長や高周波誘導加熱装置の基本構成をご説明します。
高周波誘導加熱の原理 |
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交流電源に接続されたコイルの中に金属棒を挿入すると、コイルと金属棒は離れているにもかかわらず金属棒自身が発熱していきます(非接触で自己発熱)。これが誘導加熱です。
交流電流によって被加熱物の表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で被加熱物の表面が発熱します。
この方式は被加熱物に電流を流す直接加熱方式であり、被加熱物が導電体(金属、カーボン等)であることが条件になります。
絶縁体を誘導加熱する場合は、導電性の容器に被加熱物を入れて容器を誘導加熱して熱伝達させる間接加熱方式をとります。
高周波誘導加熱装置の特徴 |
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1 | 被加熱物の単位面積に供給される単位時間当りのエネルギーが大きいので、高速加熱・高温加熱が可能 |
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2 | 被加熱物そのものを加熱するので、熱損失が小さく、加熱効率が高い (省エネルギー) |
3 | 出力を変える事により、温度制御が容易 |
4 | コイルの配置と周波数を選定することにより、ピンポイントで被加熱物の表面のみを加熱したり、被加熱物の一部又は全体を加熱する事ができる |
5 | 金属溶解などの際は、電磁力によって溶湯が自動的に攪拌(かくはん)される |
6 | 自己発熱である為、スケールの発生がきわめて少ない |
7 | 外部から被加熱物へ熱を加える必要が無いので、作業環境が良く取扱いが清潔 |
8 | 省スペース |
高周波加熱装置の基本構成 |
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高周波発振器 |
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以前は真空管式発振器やMG式が多く使われていましたが、最近ではトランジスタ式が主流となっております。
高周波変流器 |
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加熱コイルのインピーダンスが低い場合、(コイルの巻き数が少ない場合)に使用します。
加熱コイル |
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炉から高周波誘導加熱方式を導入した場合の効果 |
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高周波加熱導入の効果 | |
省スペース・・・ | 電気炉やガス炉に比べて、加熱炉の長さが格段に短く省スペースになる |
作業環境改善・・ | 炉に比べて作業エリアへの放熱がおさえられる |
清浄性向上・・・ | ガス炉に比べてスケールの付着が少なくなる |
省エネ効果・・・ | 予熱時間が不要で、メンテナンス費用も少ないので、ランニングコストが安くなる |
方式 | 昇温 速度 |
温度精度 | イニシャルコスト | ランニング コスト |
作業環境 | 操作性 | メンテ ナンス |
立ち上がり | 設置スペース | |
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ガス炉 | 熱風による間接加熱 | △ | △ | ◎ | ○
稼動時間が短い場合△ |
△ | △ | △
築炉要 |
△ | △ |
電気炉 | △ | ◎ 材質、形状にかかわらず、内部まで均一加熱できる。 |
○ | ○ 稼動時間が短い場合△ |
△ | △ | △
ヒーター 交換要 |
△ | △ | |
誘導加熱 | 金属の自己発熱 | ◎ | ○
加熱したいところだけ選択加熱可能。 複雑な形状のワークを数℃レベルで均一加熱することは苦手。 |
△ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
改善例(分野別) |
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線材加熱 | ・ガス加熱では、表面へのスケール付着が問題であったが、誘導加熱はクリーンで、温度管理も容易な為品質が安定する。 |
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鋼板加熱 | ・ガス炉・電気炉に比べ、誘導加熱は加熱時間が短いだけでなくクリーンであることにより、コーティングや塗装の接着強度が向上する。 ・設置スペースの大幅縮小が図れる。 ・既設装置の予熱として追加した場合、加熱システム全体のタクト短縮が図れる。 |
溶解 | ・ガス炉ではカーボン等の不純物の混入が問題であったが、誘導加熱に変更する事で不純物の混入が減り品質が向上する。 |
ろう付け | ・標準作業が容易になり、品質のばらつきが減少する。 ・不活性ガス等の使用により、フラックス使用量の削減とカーボン付着の軽減が図れ品質が向上する。 ・超硬チップのガスろう付けでは、高温による作業性の悪化が見られたが、誘導加熱にすることにより取り付け位置精度が向上し、後工程の研磨作業が減少する。 |
焼嵌 | ・炉では、製品内部まで加熱するが、誘導加熱の場合ローターの内側のみを加熱することが可能で、焼嵌後の冷却が早く、生産性が向上する。 |